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暗闇の子

   

854暗闇の子(1/5) sage 2011/02/11(金) 02:30:10 ID:95h8ebib0

しょうがないな~。暇なので俺なりに >>844 を修正して怖い話に仕上げてみた。

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高校生の頃サッカー部に所属していたのですが、その時に体験した話を一つ投稿します。

体力づくりや友達が出来れば良いなぁという動機で高校2年になってから部活に参加したのだが、
あの不吉な事件がきっかけとなりすぐに退部したので、所属していたのは正味10日間程度だった…。

途中入部したので、実際には皆のこなしている練習について行ける訳がなく、いつも一杯一杯だった。
レギュラーに成りたかったわけじゃないけれども、あまりに自分が情けなく感じられ、
皆が帰った後も一人で練習していた。最初の数日は何事もなく平和に経過した…。

その週の日曜日にも部活があり、18:00くらいまで残って納得の行くまで練習をしていたのだけれども、
当時は冬だったから18:00で完全な暗闇に支配され、周囲は怖いくらいの雰囲気になっていた。
ボールも見えなくなり、急いで帰ろうと部室のドアに手を掛けた時、ふと違和感を感じた。

その違和感の方向に目を凝らすと、すぐ近くに幼稚園児くらいの子供が背を向けて佇んでいる…。
月明りもなく完全な暗闇の中に、そんな幼い子が一人静かに佇んでいること自体があり得ない事に思われ、
背筋の辺りがゾッと逆立つのを感じた。

しかしどう見ても普通の子供だ。よくよく見ればしっかりとした存在感というか気配も感じるような気がする。
そこで『顧問が息子を連れてきたのかな?』と思いなおし、思い切って「ボウヤどこの子?」と問いかけてみた。
しかし、いつまで経っても返事が返ってこない。
その代わりにゆっくりと少しずつ、まるでスローモーションを見るかのように振り向き始めたのだ。

855暗闇の子(2/5) sage 2011/02/11(金) 02:31:22 ID:95h8ebib0

完全に体が俺のほうへ向いたものの、薄暗がりの中で顔がよく見えない。
そこで一歩近づきその表情を確かめようとした時、俺は心臓が凍りつきそうになるのを感じた。
なぜなら、この誰もいない真っ暗な校庭の片隅にある部室の前で、幼稚園生くらいの幼い子供が、
ニコニコと楽しそうに笑顔を浮かべていたのだ。

面食らって凍り付いていると、その子供は不意に動き、部室の奥の方へ入って行った。
そして部室の入り口から真正面の壁に背中を当ててそのまま座りこみ、先ほどの笑みを浮かべながら、
入り口に立つ俺の方をずっと見つめている。そこで、気を取り直し、再び問いかけることにした。

「顧問の○○先生の所の子でしょ? ここに来たらお父さんに叱られるよ?」

しかし今回もまるで聞こえなかったかのように、俺の声を完全に無視している。
ただひたすらに、入り口の外にいる俺を見つめながらニコニコしているのだ。
薄気味が悪くなり、とりあえず着替えを手早くすませることにした。

『部室を出るときに、この子を一緒に連れて出ればよいだろう。』

そう思いなおして、子供に背を向けながら着替え始める。
しかしその瞬間、背後から物凄く嫌な気配を感じ、再び背筋が凍りつくような感覚に支配された。
気持ちが悪くなるほどネットリとなぶられるような、纏わりつくような視線を強く感じている…。

急に怖くなって後ろを振り向いたら、例の男の子は相変わらず入り口を見てニヤニヤ笑っている。
嫌な感じはしたものの、ちゃんとそこに居るし『幽霊とかじゃないよな? 気のせいか?』と思って着替えを
再開したのだが、子供に背を向けるとやっぱり感じるのだ。恐ろしいほどハッキリした気持ち悪い視線を…。

857暗闇の子(3/5) sage 2011/02/11(金) 02:34:50 ID:95h8ebib0

そこで、『絶対にこのガキが俺の事を見てるのは間違い無いんだから、気づいてないフリをしながら、
最も視線を強く感じた所で振り返ってやろう。』と考えた。

そして暫く視線を無視しながら着替えを続け、頃合を見計らって素早く後ろを振り向いた時、
俺は自分の浅はかな行為に心底後悔することになった。

子供は首を不自然に曲げて目をカッと見開いたまま、あり得ないほど引きつった表情を浮かべている。
その表情に加えて先ほどとは明らかに異なるニタニタするような不気味な笑みを浮かべ、
その表情はもはや人間のものとは思えないような恐ろしさを醸し出していた。

そのこの表情を凝視したあと、ふと目が合っていることに気がつくと、不覚にも俺の恐怖は最高潮に達してしまった。
着替えが中途半端なまま、逃げる様に部室から飛び出すと、着衣が乱れるのも気にせず、
全力疾走で職員室へ飛び込み、顧問の姿を確認した時には、恐怖で冷静さを完全に失っていた。

そして息も絶え絶えになりながら質問をぶつけようとして、恐怖のために声が出ないことに驚いた。
俺が声を出そうとして力の限り叫ぶと、完全に上ずった頼りない声が小さく漏れた。
まるで自分が自分でないような感覚に陥る。

走ってる途中でズボンが脱げ、パンツ一枚になり、上もTシャツだけの無様な格好になっていた事と、
パニック状態にある俺の様子に、顧問は驚愕の表情を浮かべたけれども、まずは俺を落ち着かせ、
呼吸が整ったところで、改めて何があったのかを問いただしてきた。

促されるままにしばらく深呼吸をして呼吸を整えたので、ようやく冷静さを少し取り戻すことができた。
言葉を一つ一つ選びながら事の次第を話し始めると、話の途中で顧問の表情がサッと変化した。

858暗闇の子(4/5) sage 2011/02/11(金) 02:36:56 ID:95h8ebib0

その瞳には見る見る恐怖が浮かび上がるのが感じられる。そして俺の話しをすべて聞き終えると、
顧問は声にならないような低いシワガレ声で、搾り出すように言った。

「………もう………、お前は絶対に一人で部室に近づくな。今後は決して一人で入る事を許さない…。」

そしてしばらく間をおき、何か考え込むような表情の後、言いにくそうに訂正した。

「……と言うより、入部して間もないお前に言うのは心苦しいが、もう金輪際、決して部室に近づかないでくれ。
 いいか? もう絶対に行ってはいけない。皆には私の方から伝えておく。今ある荷物も他の部員に届けさせるから…。」

俺は「なぜですか?」と問いただしたのだが、顧問は硬く口を閉ざし、その後も決して理由を話さなかった。
そして「もう帰りなさい。」と静かに一言だけ口にした。

正直取り付く島もない上に、自分の中に湧き上がる恐怖を抑えるため、
敢えて「ちょっ! パンツ姿で職員室に駆け込んだんですから、このまま帰宅するのは無理ですよ!!」と
おどけて言う事しか、その時の俺には出来なかった。

その冗談も、決して場の雰囲気を和ませることは無く、むしろ次から次へと湧き上がる疑問と恐怖に支配され、
掻き消されるのであった。

後日、ロッカーの荷物が俺の教室に届けられた。持ってきた同級生は「折角頑張ってたのに勿体無かったなぁ…。」と
ポツリとつぶやいた。表情は硬く、何かを知っているものの、決して口に出すことは出来ないという決意が感じられた。
それ以降、俺は顧問の言いつけを守り、部室には決して近寄らなかった。

859暗闇の子(5/5) sage 2011/02/11(金) 02:38:46 ID:95h8ebib0

結局そのまま卒業し、あの子供は一体なんだったのか、なぜ誰も何も教えてくれなかったのか、
あの場所で過去に何があったのかという疑問に、答えが出ることは無かった。
後に残ったのは、あの瞬間に感じた背筋の凍るような恐ろしい感覚だけだった…。

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原文を可能な限り尊重したつもりだけど、残念ながら洒落にならないほどは怖くならなかったな…。

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