子供の頃、両親とスキーに行った。
私は母親と手をつないで列の最後尾に並んでいた。
何の行列かは覚えていない。
しばらくして私たちの後ろに、若い男性が二人並んだ。
行列の横を若い夫婦が通りかかったんだが、お父さんはパイプ椅子みたいな赤ちゃんキャリーで、背中合わせに赤ん坊を背負っていた。
赤ん坊は火のついたようにギャン泣きしていた。
後ろのお兄さんの一人が何気なしに体の向きを変えたとき、お兄さんのスキー板が赤ん坊のこめかみあたりにヒットした。
お兄さんはアレ?なんか当たった?っていう顔でキョロキョロしてたが、大きな音はしなかったし、父親もまったく気付いてないみたいでそのまま通り過ぎていった。
赤ん坊が白目になって泣き止んで、壊れた人形みたいに手足をバタバタ振り回していたのが忘れられない。