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異形のモノ

   

986本当にあった怖い名無し sage New! 2010/04/13(火) 16:02:14 ID:i35E/6aM0


親父が山菜好きで、よく実家の裏山にワラビやゼンマイを取りに行っていた。
その時はたまたま親父に来客があって、一緒に取りに行く予定がキャンセルになった。
でもきっと食べたいだろうと思って、一人でいつもの裏山に行った。
渓流みたいな細い流れに沿って登っていく山道で、ゼンマイはそこらにある。
ワラビはその先の明るく開けた崖のあたりにあった。ワラビの生えている場所について
なるべく太くて美味しそうなのを選んで摘み取っていた。

崖の上からは実家と周囲の何件か、それに少し離れたところにある古い民宿とその奥に
釣り堀が見える。深緑の頃は緑が綺麗で、良い眺めの場所だった。 両手で持ちきれないほどにワラビが採れたので一休みしようと顔を上げると、釣り堀のところに何かが見えた。
「……?」 緑色のいびつで丸い感じの何かが、釣り堀の水面から半分くらい出ていた。
けっこうでかい。遠目だから正確じゃないが、3~5mくらいありそうな大きな緑のジャガイモ
みたいだった。「なんだあれ……」そう思った途端それがこちらを振り返った。

真っ黒な目玉が一つ付いていた。顔といっていいのか、半分出ている部分と同じくらい
大きな眼だった。眼が合った気がして思わず手の力が抜けてしまった。せっかく摘んだ
ワラビは全部バラバラと落ちてしまった。
見てはいけない物を見たような気がして、それからすぐに家に帰った。崖下に落ちずに
済んだ少しのワラビを拾って、ゼンマイも採らずに焦って帰った。ただ、不思議とあまり恐い
感じはせずに、何か叱られたような気分だった。

親父には見たものをそのまま話したが、面白い物見たなーで笑い飛ばされた。 ちょっとしか
採れなかったワラビでも喜んでくれた。 夕飯の時に婆ちゃんにその話をすると、山神さんが採りすぎたから置いてけって出てきたんだろう、と言った。

これで終わり。恐くなくてスマネェ。

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