洒落怖超まとめ

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続・降霊

   

506続・交霊1 sage 2011/08/25(木) 02:51:58.30 ID:6sYsoCM00

あいつが学食に現れたのは、例の儀式の半月後だった。
友人三人でCランチ350円を味わっていた俺は「やっと会えたねー」と、
いきなり西野カナを歌いだしそうな奴のテンションに度肝を抜かれた。
西野カナの溺死体みたいな女が「ずっと電話したりメール送ってたのに、
全然返してくれないんだもん。会いたくて、胸が苦しかったー。
もしかして、あのこと気にしてるの?」西野溺死体は俺の隣に座るやいなや、
いきなりまくしたてている。
二人の友人は同時に俺を見つめたが、二人とも瞳孔が開いていたような気がする。
俺は飲み込んだばかりの冷凍ハンバーグを戻しそうになりながら、あの夜この
溺死体相手に五発も発射したことがフラッシュバックのように蘇り、誰ともなく
無言で首を横に振った。
それを合図に二人の友人は「午後の授業のノート借りなきゃ」などと呟き、まるで
他人のような素振りで立ち去ったのだった。

507続・交霊2 sage 2011/08/25(木) 02:54:24.37 ID:6sYsoCM00


「どうして黙って帰っちゃったの?まだ完全に霊を降ろしてなかったのに」
俺は周囲の視線を気にしながら、どうやってこの場から脱出しようかと焦っていた。
「まだ途中だったんだよ」思わず自分の耳を疑った。
あの時点で俺は全弾打ち尽し、一週間も賢者タイムが続いたのだ。
「ヒロ(仮名)君は今かなり危ない状態にあるの。ていうのは、私がヒロ(仮名)君
のこと、霊が降りやすい体にしちゃったから。ヒロ(仮名)君は今無防備な霊感体質なの。
だから浮遊霊とか地縛霊の寄り代になってるのよね」
悪霊と話をしているような気がして寒気がした瞬間、溺死体は急に席を立ち
「ああー、ここ、ここ」と、いきなり声を上げた。
驚いて背後を振り返ると、二人の女性が笑顔でやってくる。
森三中の大島をブスにしたような女が最初に口を開き、自己紹介を始めたのだった。
「こんにちは、初めまして。私たち原子力安全利用研究会?略してゲンリケンのものです」
大島の後を、光浦靖子を男にしたような女がつないだ。
「英語で言うと、広島東洋?カープみたいな感じですう」俺があっけに取られていると、
溺死体は二人に俺のことを紹介した。
「ヒロ(仮名)君は特別なんだよね。選ばれた人って言うのお?強い守護霊がついてる
んだよね。大島さん、見える?」

508続・交霊3 sage 2011/08/25(木) 02:56:43.95 ID:6sYsoCM00


俺はこの二人が同じ大学に通っていることに驚いた。
というのが、一度も見かけたことがないと感じたからだ。
どちらも目立たないブスではある。
多分、俺の視界に存在したことがなかったのだろう。
「靖子さんはどう?何か感じる?」三人は俺にかまわず原理的な
会話を続けている。
「男の人?でもボンヤリしてる」靖子は目を細めたか、目をつぶった
かして、俺の背後を窺った。
「私、最初に動物みたいなのが見えた」大島がぽつりと呟くと、溺死体が
周囲に聞こえるような声を出した。
「やっばーい、それ、絶対にやっばーい」食堂にいた二十人くらいが俺らの
方を見たと思う。
俺はこの女の原子炉で、俺の燃料棒が五回も水蒸気爆発を起こした事実の漏洩が怖かった。
絶対に周囲の学生に知られてはならない。
「カナ(溺死体)さんにはもう見えないの?」大島は意味ありげに尋ねる。
「私はヒロ(仮名)君ともう降霊しちゃったから、常用霊力が作動しないの。全電源が
失われた状態かしら」「ていうことは、ヒロ(仮名)君、もうメルトダウンしちゃって
るのお?」「つまり燃料棒が2800度まで上昇してるってこと?」大島と靖子は信じられない
といった様子で俺を凝視した。
「ヒロ(仮名)君、一番大事な時にその場から逃げちゃったのよね。わたしの電源が
復旧するまで待てば、こんな大惨事にならずに済んだのに」

509続・交霊4 sage 2011/08/25(木) 02:59:11.64 ID:6sYsoCM00


俺はいつしか三人の深刻な様子に呑まれていた。
「とにかくヒロ(仮名)君のおじいちゃんを降ろさないと、
ヒロ(仮名)君絶対やばいよ。そこらへんにいる霊を呼び
寄せちゃうから」
「私達はお父様に守られているから大丈夫だけど、ヒロ(仮名)君
はお父様の存在さえ知らないわけだし」
「まずヒロ(仮名)君が現状をしっかり認識しないことには」
何か良く分らないが、三人のブスが俺の名前を連呼しながら、俺のことを
マジで心配している。ふと風のように去っていった友人の薄情な顔が浮かんだ。
やがて、こんな胸熱な人間関係は久しぶりだとさえ思えた。
「ヒロ(仮名)君は守護霊様がつくほどの人間なの。芸能人やプロスポーツの選手、
社長やセレブには必ず徳の高い守護霊様が憑いているの。だからあの人たちは
成功するし、みんなから選ばれるの。私達は未熟ながら、守護霊様と本人をつなぐ
パイプ役なのね」
俺は守護霊をゲットすれば、この先就職で勝ち組間違いなしと保証された。
そして気がつくと、週末、大島のワンルームマンションで再び降霊術を行うことに
同意したのだった。
この時は3Pの経験がなかったし、果たしてそれがどんなものなのか、全く想像が
つかなかった。

気が向いたら続く・・・

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