いよいよ気味が悪くなった私はIさんを連れて本館へ戻ろうとしました。
その時自分の部屋の窓など振り返りもしませんでした。
絶対にそういうの見るの嫌だったので。
でも失敗してしまったんです。
その本館と別館を繋ぐ渡り廊下
途中で一ケ所クの字に折れる場所があり、そこにはめこみの窓がついています。
場所は地上から数えると2階分あり、ベランダもありません。
その窓をIさんと私は無視してただひたすらに通り過ぎたその時でした。
「コン コン」
叩いてるんです誰かが。
窓を1メートルほど離れた場所で、凍り付いて動かなくなった私達に、さらに追い討ちをかけるように
「コン コン コン」
振り向いてはいけないと、頭の中で警告が鳴ってたのですが、
行動は正反対となり、Iさんと二人でしっかり振り向いてしまいました。
その窓には
長い髪の、首から上だけの
口から血を流して狂気の嘲笑を浮かべている女性が
首しかないのに同じようにちぎれている両腕で今度は窓を力一杯叩き付けている光景がありました。
今でもあの時の、ちぎれた両腕が窓を叩く音が忘れられません。
翌月自分はそこを引っ越しました。
Iさんは何だかその日以来、誰とも口を聞かず、
そのまま彼女も引っ越して行きました。
あとで聞いた話ですが加賀は昔
首切り場だったとか
おわり