ホーム > 洒落怖 > Part 1-100 > Part 11-20 > Part 16 > 腹話術師 2016/04/02 297 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:02/08/07 17:05 これは日本の話ではないけれど…、 とある地方の小さな街に、寂しい一人暮らしの女性がいました。 楽しみといえば、週末の夜に訪ねる小劇場での芝居見物でした。 そんなある日、芝居の幕間にある余興が入ったのでした。 ハンサムな腹話術師が椅子に座り、膝の上に乗せた人形と 馬鹿ばなしをする…よくある、何の変哲もない腹話術です。 しかしハンサムなだけではない、なんと美しい声なのだろう…と、 ひと目みて彼女は、その腹話術師に恋をしたのでした。 次の週末も、また次の週末の夜にも、その腹話術の余興はあり、 彼女の恋心はつのっていくばかりました。 意を決した彼女は、ある夜、余興が終わり幕が降りた後、 楽屋を訪ねてみようと思い、行動に移しました。 しかし楽屋を訪ねた彼女に、扉の向こうから聞こえてきたのは、 「残念ですが、お会いする気持ちはありません」という 彼からの冷たい返事でした。彼女はとても残念に思いながら その夜は諦め、すごすごと楽屋を後にしました。 憧れの人と一対一で過ごしたい…彼女の願いはかないませんでしたが、 その夜限りで諦めてしまうことはなかったのです。 298 名前:297つづき 投稿日:02/08/07 17:07 一ヶ月ほど経った夜、彼女は一房の花を買って小劇場を訪れました。 幕間にはじまった、いつもの腹話術師の美声におもわず涙しました。 余興が終わり、幕が降りると彼女は席を立ち、楽屋を訪ねました。 こんどは、もし合うことがかなわなくても、 花束を扉の外に置いて帰るつもりでいました。 そんな彼女の強い想いが通じたのでしょうか、 「では、お入りください」という嬉しい返事が、 扉の向こうから聞こえてきました。 ドアを開けて入ると、まるで、腹話術の舞台そのもののような演出。 奥の壁の前に椅子が置かれ、ハンサムな腹話術師が座り、 膝の上には人形が置かれていました。 スポットライトだけが灯っていて、「彼」と人形、そして椅子を 暗闇の中にくっきりと浮かびあがらせていました。 胸をどきどきさせながら、彼女が、 「はじめまして…」と呼びかけた時でした。 突然、椅子の上から何かが倒れました…、 椅子の上には「人形」だけが残っていました。 じっと彼女を見つめ、「分かったね…」というようにうなづき、 寂しげに、彼女に笑いかけたのでした。 B! LINEへ送る - Part 16, 洒落怖 人形