洒落怖超まとめ

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みちかさん

   

947 名前: みちかさん1/6 04/02/07 07:29
親戚に霊能者と呼ばれている人がいる。
彼女の地元ではそれなりに有名で、
本名とは別に、近所の人は彼女のことを
「みちか」さんと呼んでいた。
なんでも”身近”と”未知か”、”道か”
が混ざっていて、本人曰くいい感じなので
周りにそう呼ばしているらしい。
今現在北海道のM別におり、45歳である。

彼女は、昔東京で不動産会社の事務をしていたのだが、
ふとしたきっかけでやめたらしい。
その原因は今でも話してくれない。
旦那さんとはその時期別れて、
子供も旦那さんが引き取っている。

僕には元々霊感などないし、
霊も怖いので「彼女」すなわち「みちかさん」と
話すのはあまり好きじゃなかった。
初めて話したのは、小学校4年の時、
僕が京都に住んでいたときだ。
その時は丁度、家族で父親が昔住んでいた
北海道を訪ねていた。

948 名前: みちかさん2/6 04/02/07 07:31
「あんた、家の近くにお墓のある公園があるでしょ?」
えっ?と僕は思った。
「むやみに拝んだらだめだよ。霊がついてくるからね。」

初対面でいきなりこんなことを言われた。
そもそも何故彼女がそんなことを知っているかが
わからなかった。
ただ、当時友達の間でほんの一時期、拝むのが流行って、
僕も真似していたのは確かだった。両親すら知らない事だ。
それ以来拝むのはやめた。

2回目に会ったのは、東京でおじいちゃんの葬式があったときだ。
みちかさんは北海道から葬式に参加するために来ていた。
後から知ったのだが、その時はすでに霊能者まがいの
ことを地元でやっていたらしい。
その時はこう言われた。
「あんた苦労するよ。うん。」
「でも、あんたの亡くなったおばあちゃんが、
ええ人だからね。守ってくれてるのが救い。
あんたの父親も苦労人だけど、そのおばあちゃん、
つまりあんたの父親のお母さんだけど、
その力があるから、今は結構幸せにやってるでしょ?」
僕のおばあちゃんは、僕が生まれて2,3年後に亡くなった。
おばあちゃんは、僕をとてもかわいがったらしい。

それにしても、僕はその時中学一年生だったが、
またもや嫌な感じになった。
なんでこんなことをこの人は言うのだろう。
そう思っていたのだった。
今振り返ると僕の人生は特別不幸というわけでもないが、
とりたてて幸せというわけではなかった。
当たっていないわけでもない。

949 名前: みちかさん3/6 04/02/07 07:32
3回目に会ったのは、おじいちゃんの何回忌かの時だ。
小さい頃からみちかさんには嫌な感じを受けていた僕は、
話さないようにしていたのだが、なんとなく目があって
話さなければいけない雰囲気になってしまった。

「あら、元気?」
初めてそう聞かれて僕はちょっとびっくりした。
「別に会うたびに小言言いたいわけじゃないのよ。
ただ気になっただけだからさ。」
と彼女は笑って言った。
「霊能者みたいな事しているんですって?」
僕は思い切って彼女に聞いてみた。
「まあね。といっても頼まれた時だけ。
普通は自分からは何も言わないのよ。
そんなにわかるわけでもないし。
親戚だろうとね。」
嘘つけ、と内心思ったが黙っていた。
「あんたは特別よ。」
まるで僕の心を見透したように彼女は付け加えた。
「ところで、どんな感じなんですか?霊って?」
「どんな感じ?そりゃいろいろ。ほんと、いろいろ。
でもどれも基本的にはさ、人間の思念の残りなわけよ。わかる?」
わかるわけがない。
「個人の何かの思いが霊になっちゃうわけよ。
だから、その思いを知るのが大事なの。ね。」
「ただ・・。」
「時々とんでもないのがある。私じゃどうしようもないのが。」
「例えば?」と僕。
「聞きたいの?」
そう言って、みちかさんは僕に霊体験を語ってくれた。

950 名前: みちかさん4/6 04/02/07 07:33
みちかさんは知人に頼まれて
北海道のK町にいくことになった。
そこには2年前ぐらいから原因不明の病に罹った
14歳の少年が待っていた。
なんでも胸がずっと苦しいらしい。
医者の方でも原因がわからず、
かといって命にかかわるほど
危険というものでもないので、
入院費用のことも考え、
自宅療養を続けているとのことだった。
学校は気分がいい時にだけ行っているらしい。

「行ってみてびっくりしたのよ。ほんと。」
と彼女は興奮気味に言った。
「最初はさ、まあ私のような胡散くさい人間に
頼んでくるくらいなんだから、
当然霊がらみなのはわかってたけどさ。」
そこは、北海道地方に特有の屋根が三角に尖った
普通の家だった。壁はクリーム色で屋根は赤い家。
その時には別段変な感じはしなかったと言う。
ところが、家に入ると、
「ウッ!」という胸が押しつぶされる感じに襲われたらしい。

952 名前: みちかさん5/6 04/02/07 07:40
「知人に引きつられて中に入ると、
その母親が待ってたわけよ。当然だけどね。
父親は仕事を休んだらしく、
少年が寝ているベッドの前で正座してたわ。」
「で、挨拶して、『みちかです』と自己紹介したわけ。
その時ちょっとピンと来たんだけどさ。ま、やりながしたの。」
何を?と聞く前に彼女は続けた。
「それで、いよいよ少年とご対面。案の定、何か黒っぽい服を
来た人が少年の胸に乗っかっているのね。」
「その時丁度父親はトイレに行くって下へ行ったのよ。
「変でしょ、これから除霊をするってのに。」
確かに変だ。
「で、よ~くその霊の顔を見たらさ・・・
なんとその父親の顔してるじゃない!」
「予感はしてたけど、本当にびっくりしたわ。
で、母親にちょっと事情を聞いたらさ、
どうやら、その子は母親の連れ子らしいのね。
『はは~ん。そういうわけか』って思ったの。」
「その母親は3年前にその父親と知り会って、
再婚したんだって。
で、2年前から胸が苦しくなったってことは、
どうやら父親がその子を疎ましく思ったみたいね。」
なるほど。
「でも困ったことにさ、生霊ってのは私もその時初めてで、
除霊したことないのよ。故人の霊なら問題ないんだけど。
生きている場合はねえ。で、どうしようか考えてたらさ・・」

953 名前: みちかさん6/6 04/02/07 07:42
「なんとその父親の生霊が突然っ!
私の方すっごい形相で睨んで、
私の胸を両手でこうぐ~って、
押しつぶすようにし始めたのよ!」
「私、もう『うっ、うっ!』ってなって
息できなくなって。苦しみながら『外だして、外だして!』って
知人に言ったの。」
「で、連れ出して貰って、玄関出たらすぐ息できるようになって。」
「それで結局除霊はどうしたんですか?」
「諦めた。」
「えっ?」
「だって、父親が原因だなんて言えないし。
言ったら家庭崩壊だよ?そりゃ息子はよくなるかもしれないけど。」
「そのままにしといたんですか?」
「ん。あの父親による思念も、いつも強いわけじゃないから、
そのうちね。無くなるでしょ。なんかで。」
「いいかげんだな~。」
「だって、別に大金もらってやってるわけでもないし。
壷売ってるわけでもないしさ。笑」
「ま、それは冗談として。生霊はね、取り扱いを間違えると
本当に大変なことになる。当たり前だけどね、
死んだ人よりね、生きている人のほうが思いが強いんだよ。」
その後、その少年の話を聞いたが、結局あの夫婦は離婚したとのこと。
それ以来少年は胸の痛みが消えたそうだ。
でもあの時一番怖かったのは、
みちかさんの話の最後の部分だった。

「知人が私を外に連れ出そうとした時、
知人は、居間で父親を見たらしいんだけど・・。」
「正座して両目見開いてこっちをが~って見てたって。
机で右拳を震わせながらね。すごい顔してたって。」
「それ聞いて、生半可な霊よりぞ~っとしたわ。」

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