洒落怖超まとめ

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マニキュア

   

843本当にあった怖い名無し sage 2010/12/14(火) 12:41:37 ID:oLLeg76J0

前置きが少し長くなるが、俺の名誉のために読み飛ばさないでほしい。

俺には変わった知り合いがいる。呼び名は仮に真知としておく。
専攻はちがうが同じ大学の学生で、俺の彼女(アキちゃん)の従兄で、彼女の親友(桜さん)の彼氏でもある。
つまり、いくら苦手に思っていても距離がとれない関係だ。
明るいし、話もおもしろい。決して悪い奴じゃないんだが趣味が酷い。オカルト趣味で女装趣味という二重苦で、
以前ファミレスで偶然会ったときに姉を紹介したんだが、後日、その時姉が着ていたワンピースと同じ物を着て現
われたことがあった。
いつの間にか姉から店を聞き出していたらしい。良い趣味だと姉を褒めていた。
もちろん、ドン引きした。

ここからが本題なんだが、先日、その男からラブホに誘われた。
ぶん殴って逃げようと思ったのだが、違う違うと身振りを交えて言ってきたので話だけは聞くことにした。今にし
て思えばこの時逃げていれば良かった。

そのラブホは所謂心霊スポットで、幽霊が出る部屋があるらしい。行動半径内だし是非とも行ってみたいのだが、
桜さんに話したら無言で殴られたそうだ。当たり前である。
俺が断ったらアキを誘うぞーとたいへん嫌な脅しをかけてきたので、その日の晩に4人で話し合うことになった。

そして話し合いの末、翌日の夜に俺と真知でラブホに行くことが決まった。
きっと居酒屋で話し合ったのがいけないんだと思う。
周りからは女3人に囲まれてリア充に見えてただろうけど、現実はこれなんだぜと泣きたくなった。

翌日、昨日と同じ居酒屋で待ち合わせてラブホに行った。彼女らは居酒屋でお留守番。
酔って悪ノリした女2人に超楽しげに送り出された。

845本当にあった怖い名無し sage 2010/12/14(火) 12:47:57 ID:oLLeg76J0

真知に外せない補講が入り、着替え(女装)やらなんやら待っていたら、チェックインは夜八時を過ぎていた。
部屋に入って早々、ピンクのマニキュアで飾った手が肩に伸びてきたので慌ててはたき落した。
部屋は12畳ほどの広さで、天井が星空になった女の子の喜びそうなものだった。シャワールームも広めでキレイだ
し、隣りにいるのがアキちゃんならと思うと無性に悔しかった。

ふたりで部屋を回り、しばらく時間を潰したが何も現われる様子はない。
そういえばどんな幽霊が出るのかも聞いていなかったが、そもそも信じていないのでどうでも良かった。

「やっぱ絡んでないとダメなんかね」
退屈した真知がつぶやいたので、俺は体ひとつ分ほど距離を取った。
「……お前、女装趣味だけど、そっちの趣味じゃないんだよな?」
「なに警戒してんの? 俺は桜裏切るような真似はしませんよー」
とのことなので、一応安心した。それから良い機会なのでいろいろ聞いてみた。
「なんで女装ハマったん?」
「あー…高校の時にアキと桜にやらされたのが最初。聞いてない?」
完全に初耳だった。

「今日は急に補講入ったからさー、アレなかったらもっとクオリティ上げてきたのに。あのハゲが」
「十分だろ。メイクばっちりだし、マニキュアまでしてきやがって…」
褒めるようなことは言いたくないが、真知の女装はレベルが高い。しかし、真知は何が気にいらないのか口を半開
きにして「はぁ?」と声を出した。そしてすぐ真剣な顔になる。

「……何色だった?」
「ピンクだろ。何言ってんだよ?」
「どこで見た?」
「部屋の入り口。肩に手なんか回してきやがって、紛らわしい……え?」

真知はにやにや笑いながら、顔の高さまで上げた手をひっくり返して、手の甲を俺に向けた。
白く華奢だが、節がゴツゴツした男の手。その指先にピンクは無かった。綺麗に切り揃えられた爪は素のままで、
どんな色も塗られてはいない――

その後、大笑いする真知を引っ張って俺は部屋を出た。

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