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裁き

   

787 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 03:46:36.67 ID:U8CDXpqm0

自分の思想信条が、自分が観た夢によって覆る、そんなことが有り得るだろうか

私はかねてからの死刑賛成論者だ。
人を殺した罪は自分の命を差し出すことでしか償えないと考えていた。
子供の頃、自分の親を殺そうと日々妄想していた時も、それは同じだった。
親を殺した後、私はどうなるか、私はどうするか、私は何度もシミュレートしていた。

きっと私は手を差し伸べてくれる人権派の弁護士たちの誘惑を断るだろう。
そして検察側の求刑を全面的に受け入れ、甘んじて国家に殺される覚悟だった。
それは遺された弟や妹が果たせない親の敵討ちであり、私に更生する意志がない以上、
危険な殺人犯を再び社会に解き放たないための最も合理的な解決方法であるとさえ考えていたからだ。

── ある日、私は夢をみた

788 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 03:47:37.62 ID:U8CDXpqm0

いつものように家でテレビを観ていると、あるニュースに目が留まった。
最近、顕著になりつつある少年犯罪の凶悪化が報じられている。

どうやら誰かが中高生たちに銃を横流ししているらしい。その中高生たちの犯行手口はこうだ。
街中を何食わぬ顔で自転車で近づき、通行人を無差別に射殺してダッシュで逃げ切るというもの。
そうして無実の一般市民が少年少女たちのストレス発散の餌食となっているのだ。
この事件の根深いところは犯行の動機が愉快犯というだけに、始末に負えないその悪質さにある。
銃はそれなりに出回っているようで、すでに何人か被害者が出てしまっている状況だ。

私は報道を目にして、自分の中の正義感が騒めき立った。無差別殺人をやった犯人が、
いまだ逮捕されずに平凡な日常生活を送り続けていることを想像し、私は憤慨した。

「なぜ裁かれない…死刑ものだぞ。自分が現場を目撃していたら絶対に捕まえてやるのに…」

煮え切らない私は居ても立っても居られず、すぐに外出し街中を散策することにした。
犯行現場を目撃しさえすれば事件解決の糸口が見つかると考えたからだ。

789本当にあった怖い名無し sage New! 2012/02/22(水) 03:53:40.33 ID:U8CDXpqm0

ほどなくして近くのスーパーマーケットに差し掛かったところ怪しい人物を発見した。
中学生とおぼしき少女が自転車に乗ってこちらに向かって来るのが遠目に見えたのだ。

「自転車…少女…もしや、あの娘が!? いや、待て。だが、まだ幼いぞ…しかも女の子だ。
 …いくらなんでも疑いすぎだ。アレは自転車に乗ったごく普通の少女だ。そうに違いない」

しかし私は念のため、すぐに物陰に隠れられる位置を確保しながら注意深く少女を観察した。

「ズバババッ!!」

次の瞬間、サブマシンガンの銃声が街中に響き渡った。
目の前に倒れ込む一人の女性、大量の血が地面を濡らしはじめた。
阿鼻叫喚をあげながら恐怖で逃げ惑う近隣の住民たち。ダッシュで逃亡する少女。

間違いない、あの少女が撃ったのだ。

790本当にあった怖い名無し sage New! 2012/02/22(水) 03:55:44.10 ID:U8CDXpqm0

「クソッ!!取り逃がしたか!」

悔しさが顔に滲み出る。現場を目撃した私は物陰に隠れることが精一杯で何も出来なかった。
拳銃であればリロード中に追いかけることも考えられたが、サブマシンガンでは手のつけようがない。
だが、少女の顔はしっかり覚えた。警察に行こう。私は犯人を目撃した重要な証人となったのだ。

取り調べを受けた私は警察官に迫った。

「で、捜査状況はどうなってるんです?いつまで事態を放っておく気ですか!」

警官は少々困った顔をしながら近々行われる作戦概要をこっそり教えてくれた。
それは少女が通う学校に待ち伏せし銃を所持する子供たちを一斉検挙するというものだ。

「そういうわけだから、後は我々に任せて、当日は大人しく自宅謹慎しておいてくれよ」
「はい、わかりました」

791 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 03:57:31.90 ID:U8CDXpqm0

しかし、私は返事とは裏腹に心の中でこの作戦に疑問を抱いていた。
そもそもこの作戦、相手の人数によっては現場が混乱し犯人を取り逃がす可能性が非常に高い。
銃を携帯しながら四方八方に逃亡を図る少年少女たちを全員現行犯で逮捕できるとは到底思えない。

それに、あの少女…私の目の前で発砲したあの少女だけはしっかり逮捕して貰わなければ気が済まない。
少女の顔を知っているのは私しかいない。それならば私が現場に行くことであるいは逮捕に協力できることも…
そう考えた私は当日、密かに警察の取締り現場を視察することにした。

792 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 03:59:25.67 ID:U8CDXpqm0

── その日、警察の陣形のわずか後方に身を隠した私は作戦が決行される瞬間を待った。

「検挙!」

掛け声とともに一斉検挙がはじまった。怯える中学生たちを白い煙幕が包み込む。

「スモークグレネード!?ちくしょう…厄介だな」

果敢にも煙幕の中に飛び込む警官たち。他方、混乱をくぐり抜け逃亡に成功する子供たち。
言わんこっちゃない。…と、そこに例の少女が自転車に乗って全速力で出てきた。
銃を携帯している。間違いない。だが混乱する現場で警察は少女の存在に気づいていない。
ここで少女を逃したら終いだ。私は咄嗟に路上に転がっていた銃を手に取り、自転車に飛び乗った。
少女を確保するならいざという時の護身用として必要と判断しての行動だ。

自転車に乗り少女を追跡する俺。必死に逃げる少女。

「止まれぇぇぇ!! 止まらないと撃つぞ!!」

793 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 04:01:20.74 ID:U8CDXpqm0

大声で少女に説得を試みるも全く聞く耳を持たない。かなり長い間並走が続いた。
だが、説得も虚しく逃亡する少女のサブマシンガンの銃口が私に向けられる。
このまま黙って撃たれてしまうしかないのか。いや…それならいっそのこと。

「いいか、これは正当な裁きだ。あの日、お前は無実の人間を殺した。その命をもって罪を償え!!」

私は銃を少女の頭部めがけて発砲した。少女が乗った自転車は前のめりに転倒、路面に放り出される少女。
自転車から降りて恐る恐る近づいてみる。ジワジワと、しかし確実に地面を血が濡らしている。

「やった、やったぞ。ついに裁きを下してやった」

間違いない。私は少女の絶命を確信した。

794 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 04:11:04.60 ID:U8CDXpqm0

二度と動くことのない その女の身体をゆっくりと視姦しながら、
しだいに冷静さを取り戻した私は、自分が冒した事の重大さに気づく。

そういえばここは警察の作戦現場から遠く離れた管轄外の場所…
そこに本作戦における最重要指名手配犯の一人である少女の死体が転がっている。しかも射殺体として。

警察があれほど慎重になって一人の怪我人も出さないよう作戦を練っていたのにも関わらず、
一瞬にしてその苦労を無為にしてしまったのだ。…いったい誰が!?

誰って… …俺だ…俺しかいない。いや、違う。これは正当防衛だ。
撃たなければ俺が殺られていた。そうに違いない。
しかし、この手元にある銃、これはどうなる!?日本では違法だぞ。
銃を撃ったのは…やっぱり俺だ。つまり、これは俺の責任問題!?

795 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 04:12:50.59 ID:U8CDXpqm0

「ち…違う…これは俺じゃない。俺がやったんじゃない。そうだ、これは警察だ。警察の失態なんだ。
 警察が少女を逃したりしなければこんな結果にはならなかったんだ。ハハッ…俺は無関係だ。
 そもそも俺は現場に居なかったぞ!そうさ、俺には完璧なアリバイがある。俺はずっと家で謹慎してたんだ」

慌てて銃から指紋を拭き取ると、私は現場を後にした。

帰宅し布団の中にうずくまると今日あった出来事を冷静に振り返る。

「考えても見ろ。そもそも警察が一斉検挙を行なったのは俺の情報提供に基づいてじゃないか。
 加えて、指名手配犯が死んだのは俺が射殺したからだ。 あぁ…なんてことだ、すべて俺の責任だ…」

796 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 04:16:02.06 ID:U8CDXpqm0

自分が犯した罪の重みに耐え切れなくなった私は、その日はずっと身震いが止まらず寝付けない夜を過ごした。

「ククッ…何が正義だ。俺なんて威勢がいいのは最初だけで
 ヤバくなったら平気で責任逃れをする最低の野郎じゃねーか…ちくしょう…」

そうなのだ。少女殺害現場が誰にも目撃されていない以上、
このままいくと、今回の件は確実に警察の不手際ということで落ち着いてしまうのだ。
私がこのまま墓場まで事件の真相を黙秘し続けさえすれば、すべては警察の不手際になる。
我ながら自分の薄情さ加減に呆れ果てた。散々っぱら公権力に頼っておきながらバツが悪くなったら知らないふり。
窮地に追いやられてはじめてわかる、人間としての器。その資質。己の本性。
最低の人間だ。俺は最低の人間だ。人間失格という言葉が重く頭にのしかかる。

797 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 04:18:36.60 ID:U8CDXpqm0

── 翌朝、テレビのニュースを観る。

思ったとおりだ。昨日の事件で警察がマスコミに叩かれている。
記者会見の場で深々を頭を下げ謝罪する警察幹部たち。
本来なら、こうしてマスコミ連中に頭を下げていたのは私だったはずだ。
それを、あろうことか私は国民の面前で醜態を晒すことを嫌がるあまり、警察に責任を擦り付けて逃亡したのだ。
そしていま、まるで他人事のようにしてこの絵面を眺めているのだ。

すべての新聞やマスコミが揃って、少女を射殺した警官の氏名とその処遇について公表しろとはやし立てる。
現行犯といえど成人に向けて警官が発砲することさえ問題視される現代の日本社会において、
未成年のそれも中学生の少女を撃ち殺したというのだから、
国内のあらゆる論客が一斉に警察バッシングに傾いたというわけだ。
しかもこの尋常でない報道のされようはいったいなんだ…正直ここまでとは予想外だった。

798 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 04:20:53.66 ID:U8CDXpqm0

件の警察幹部は苦い顔を押し殺してこう会見を締めくくった。

「今回の件はまだ少女を誰が射殺したかまでは特定できておりません。
 したがって早急に事実関係を調査すると共に、引き続き捜査を続けて参ります」

私は思わず息を呑んだ。事実関係を調査するだって!?
待て、よく考えるんだ。私に落ち度がなかったか、もう一度よく考えるんだ。
このまま捜査が継続された場合、どんな結末が待ち受けている。

まず、警察は警察内部を調査することからはじめるだろう。そしてすぐにシロと断定するに違いない。
なぜなら、少女を射殺した警官は存在しないからだ。

801 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 04:24:57.40 ID:U8CDXpqm0

次に警察は少女を殺す動機がある人物を捜査しはじめるだろう。具体的には少女の交友関係の洗い出しだ。
少女の顔を知っていて、尚且つあの日以降 行方不明となっている人物を捜査線上にあげるに違いない。
しかし、それらもいずれシロと断定されるだろう。

なぜなら、仮にあの混乱を逃れた行方不明者がいたとして中学生が身を隠せる場所など数が限られている。
友人と携帯電話で連絡を取り合ったり、知人宅に居候したり、いずれにせよ逃亡先での行動記録ひとつひとつが
彼らの当日のアリバイになるからだ。後は関係者の証言を辿っていけばいずれはシロと断定せざるを得なくなる。

すると、残る容疑者は俺ひとりとなる。俺は少女が犯した犯行を目撃者した唯一の証人であり、
警察に少女逮捕の依頼を喰ってかかるほど熱心な正義感の持ち主だった。
それに当日、警察の忠告を無視し外出した俺が、勢い余って彼女を殺害するには十分な動機がある。

この“目撃者”と“十分な動機”という2つの条件が付随してまわる以上、
必ず捜査線上に俺の名前があがる。それだけは疑いようのない事実なのだ。


824787 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 12:10:43.89 ID:U8CDXpqm0

「完璧、詰んだか…」

一気にからだの体温が下がる。悪寒と言ってもいい。どうする、いますぐ逃亡するか!? いや、違う。
ここで俺が行方不明になったりしたら、それこそ「私が犯人です」と警察に教えているようなものじゃないか。
逃げようがないんだ、これ以上は。大人しく観念しよう。逃げたところで私の罪が消え去るわけでもないのだ。
私は深く溜息をつくとジッと天井を見上げた。

「さて、何年になるのかな。獄中生活は。
 そうだな…せっかくだ、最後にシャバの空気でも吸っておこう、今日は晴れだ」

826787 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 12:19:01.17 ID:U8CDXpqm0

外は日差しが眩しい。そういや太陽の光ってこんなに暖かかったんだな。不思議と新鮮に感じられる。
色づいた新緑がこんなにも青々しく、そして清々しく香っていただなんて、いままで気付きもしなかった。
柄にもなく街中の喧騒を噛み締めていると、交差点の先に黒服の男性が不自然にこちらを伺っているのが見えた。
来たか、思ったよりも早かったな。交差点を渡りきったところで男性3人に取り囲まれる。

「よろしいですか?」
「はい」

私ははっきりと頷いた。警察の身分を確認するまでもない。これが俺の人生の終着点だ。

「では、私に付いてきてください」

827787 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 12:24:41.01 ID:U8CDXpqm0

男に案内されたのは、街中の一角にある窓のない小さな建物。警察署ではない。交番でもない。どこだここは。
案内されるままに室内に入ると、それが霊安室であると気づくのにそれほど時間は掛からなかった。
暗がりの部屋にある一台のベッド。それを天井の照明ひとつで照らしている。ベッドの上には死体がひとつ。
顔に白い布が被せられているが、身長や髪の長さからそれが例の少女であることに疑いの余地はなかった。

ベッドの傍らには監察医とおぼしき白衣の男性が佇んでいる。私はすっかり気が動転し思わず叫んだ。

「こんなことをしてどうなる!ああ そうとも、これは間違いなく私が殺した少女だ。それは認める。
 だが、そんなことは俺を警察署に連れていってくれればいくらでも供述してやれる。逮捕するに十分なほどにな。
 それに、死体の本人確認が必要ならば、鑑識に撮らせた顔写真を供述材料に使えば済む話じゃないか。
 それをこんな…こんな風に、俺に少女の生の遺体を見せつけていったい何が目的なんだ!!」

828787 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 12:31:35.04 ID:U8CDXpqm0

必死にこの捜査の異常性を訴えてみせたが、私を取り囲む男たちはそれを無表情のまま黙って覗き込む。

私は見たくない。少女の死に顔を。少女を殺したのは私だ。私が殺したんだ。この手で。
だから、どんな裁きが俺を待ち構えていようと受け入れる覚悟だ。でも、それで十分なはずだ。
だから、頼むからどんな顔で死んでいるかなんて…俺は知りたくないんだ。

「では、ご確認ください」

白衣の男性が静かに白い布を取り払った。少女の素顔がゆっくりと光に照らされる。

831787 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 12:40:21.06 ID:U8CDXpqm0

私の頬に大粒の涙が溢れ出す。もはや止めようのないこの涙が、人目をはばかることなく、ただただ流れ出てくる。

「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…本当に…本当にごめんなさい…
 あなたを殺したのは私です…私があなたを殺しましたっ!!!ぁああああっ!!!」

彼女はもはや人ではなくなっていた。
その顔は酷く腐敗し黒く緑色に変色し、ほとんど骨と皮だけの状態のものに蛆が食らいついていたのだ。
生前の状態を何一つ留めていない生身の身体。もはや顔の識別すらつかなくなった生身の身体。

少女をこんな状態にしたのは私自身だ。私はその身体の前で、何度も何度も謝罪の言葉を叫び続けていた。
生前の彼女がどれほどの凶悪犯であったかなどという事柄は、もはやこの場ではなんら意味を成さなくなっていた。
私が成さなければならないことは、少女の目の前で自分の罪を素直に告白すること。ただそれだけでしかなかった。

832787 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 12:45:12.08 ID:U8CDXpqm0

「バタン」勢いよく部屋のドアが開く。そこに一人の中年男性が呆然として立ち竦んでいた。
男性はその場で硬直したまま目前の光景が信じられないといった面持ちで、彼女の遺体を凝視している。
間違いない、彼女の父親だ。そう確信した私はその男性に向かって深々と土下座した。

「あなたの娘さんを殺したのはこの私です!私が殺しました!!
 申し訳ございませんでした!私はこれから待ち受けるどんな罰をも受け入れる所存です。
 ですが、それでもなお いったいどんな風にして償えばこの罪を赦して戴けるのかっ!!
 私には皆目検討もつかず…その…私は…私は…!!!」

涙に溺れ言葉に詰まる私に耳元で誰かが囁く

「あなたを赦さない」

833787 ◆G10zQMdncg sage New! 2012/02/22(水) 12:51:04.20 ID:U8CDXpqm0

ここで目を覚ました私は額に流れる涙を軽く拭うと暫く呆然として波打つ鼓動を落ち着かせた。
布団の中ではすでに体中がジットリとした汗で濡れている。それにしてもアレはなんだったんだ。
目を覚ましたいまでもこうして一つ一つの事柄を鮮明に思い出せる。

しかし、今となって確実に言えることは、あの少女の前で罪を告白し、その父親の前で赦しを乞うた以上、
少なくとも私にはもはや死刑に賛成…もとい他人に死刑を宣告する資格などないということだ

自分の思想信条が、自分が観た夢によって覆る、そんなことが有り得るだろうか
熱いシャワーを浴びながら、私は今いるこれこそが現実なんだと強く自分を確かめた。
いつもの朝、出掛けようとすると郵便受けに一通の封筒が届いている。

差出人は、── 裁判所だ。

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